テレビドラマや映画に実在の企業や商品などを登場させて宣伝効果を狙う「プロダクト・プレイスメント」。近年はデジタル技術の発展に伴い、新たな広告配信の形が確立されつつある。はたしてどのような進化を遂げているのか。最新の広告事情に迫る。
映画『天気の子』にも採用された「プロダクト・プレイスメント」
映画やドラマなどの映像コンテンツには、背景に企業のロゴが映っていたり、主人公が特定のメーカーの商品を使っていたりするシーンが描かれることがある。
この広告手法を「プロダクト・プレイスメント」という。
たとえば、2019年に公開された新海誠監督作品『天気の子』では、主人公・森嶋帆高が寝泊まりしたマンガ喫茶として「マンボー新宿靖国通り店」が登場。そこで帆高が「日清のどん兵衛」を食べるシーンも描かれている。また、同じく「日清のチキンラーメン」や、「湖池屋のポテトチップス」なども作中に登場する。
新海誠監督作品つながりでいうと、2016年に大ヒットを記録したアニメ『君の名』は「サントリーの南アルプスの天然水」とのコラボCMで話題となった。
このように、視聴者に広告を無理やり見せつけるのではなく、自然な形でストーリーに登場させることで間接的にアピールできるため、企業や商品の認知度・イメージの向上につながる手法として注目を集めている。
AI技術を取り入れた新たな広告手法
しかしこの手法だと、コンテンツを制作する際に広告も完成させる必要があるため、広告を柔軟に配置することができないという欠点がある。また、時代に応じて変化するビジネスシーンにも対応がしづらい。さらに、1つの広告枠の中に入れることができる広告は1つのブランドのみのため、広告収入の増加を見込むことも難しかった。
そんなデメリットを解消し、新たな広告戦略を仕掛けているのが中国で動画広告を手掛ける「海米文化(HaiMi Culture Media)」だ。
その手法は、AI技術を使って撮影済みの動画内から広告を入れることができそうなシーンを自動判別し、そこに広告を後処理で合成して入れ込むというもの。たとえば映像の中にテレビが出てきたら、その角度やサイズに合わせて広告を挿入。表示時間も自動で調整されるため、ストーリーの邪魔をすることなく、広告を表示することができる。
また、同じシーンであっても複数のブランドの広告に差し替えることが可能な点も大きな特徴だ。
広告主側としても、広告が表示された回数や期間などに応じて広告費を支払えばいいため、広告費を抑えることができるというメリットもある。
すでに海米文化では技術テストを終え、実際に活用をスタートしているという。様々な動画コンテンツ内で合成された広告を目にする日もそう遠くないかもしれない。